はじめに
本校は、南アルプスのふもと、早川町にある小さな小学校です。今年度の全校児童は、なんと6人。日本一人口の少ない町にある、日本一の「ちっちゃい学校」かもしれません。でも、だからこそできること、だからこそ見えてくるものが、たくさんあると私たちは考えています。早川町は、美しい自然とあたたかな人々に囲まれた場所です。町の真ん中を流れる清らかな早川、四季折々に変化する山々、そして地域の方々の深い愛情と応援。そんな環境の中で、子どもたちはのびのびと、元気いっぱいに学校生活を送っています。
私たちの学校では、規模の小ささを活かした特色ある教育活動を大切にしています。その一つが、長年続けている「わらべどんぐり祭り」での民話劇です。毎年、地域に伝わるお話をもとに、子どもたちと一緒に台本をつくり、台詞を覚え、演技に挑戦します。方言や踊りも地域の方に教わりながら、全員が主役となって一つの物語をつくり上げていきます。この活動は、単なる発表ではなく、地域とのつながりを感じる大切な時間となっています。
もう一つの柱が、「BEANS~自然科学者になろう~」という探究活動です。校区にある野鳥公園をフィールドに、子どもたちは自分でテーマを決めて調べ、観察し、考え、発表します。自然の中で五感を使って学び、驚きや発見を共有するこの時間もまた、本校ならではの学びの場です。
「伝統」とは、ただ同じことを繰り返すことではありません。灯火を守るように、時代に合わせて新しい工夫や考えを加えながら、大切に受け継いでいくものです。私たちはそれを「伝燈(でんとう)」と呼び、大切な明かりを子どもたちとともに守り育てていきたいと願っています。「ちっちゃい学校のでっかい挑戦」それが、私たちの合言葉です。これからも、この学校だからこそできる教育を、地域とともに楽しみながら創っていきます。
6人の子どもたちの瞳は、今日もキラキラと輝いています。
令和7年4月 早川北小学校長 芦澤 稔也
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